最近、ライブドアの堀江社長や相棒である村上ファンドの代表者がコメントをする場面をテレビで見ていて少々思うことがあります。
堀江社長はニッポン放送に対し、時間外取引という制度に存在した法律上の「不備」を悪用した奇襲作戦によって「敵対的買収」をしたわけですが、実際には「敵対的」に乗っ取りをしようとしつつ顔ではニコニコして「仲良くやりましょう」というのでは、やっぱり誰がみても心と顔が全く違うことがミエミエではないかという気持ちが強くなってまいります。
「やってはいけないのならば、法律にきちんと書いておいてほしい」などと言った堀江社長の理屈を聞くと、ストーブを背負ってやけどをした人が「これを背負うなと商品に書いていないからいけないのだ」と言って損害賠償請求の裁判を起こして勝訴した変なアメリカ人の裁判を思い起こします。しかし、何でもアメリカの真似をすればいいというものでもないでしょう。
堀江社長と組んでいるM&Aコンサルティング企業(通称村上ファンド)の村上世彰(よしあき)代表は、12日に行なわれた都内のセミナーで「フジテレビの経営者はクズだ」という趣旨の侮辱的な発言をしましたが、私は「やっと彼らの本音が出たなあ」と思いました。
つまり、彼らは自分たち以外の経営者は時代遅れであり、無価値の「クズ」にしか見えないのです。彼らは東大を出て優秀なのかもしれないし、金儲けも上手なのかもしれませんが、それにしてもそこまで人を見下す彼らの精神はむしろ病んでいると言わねばなりません。
堀江さんは「法律の不備を突いた」という発言をされ、「将棋で言えば既に詰んでいる」と挑発し、「フジテレビを支配する」、「テレビを殺す」などという暴言とも言うべき言葉を浴びせてきましたが、とても将来の日本の文化の担い手とは思えません。企業売買について智恵がある、というだけの話です。
堀江社長が野球の球団を買い取ろうとした際にも、「ライブドアはアダルトを販売している」という事実を暴露され、何の釈明もできませんでした。この人が本当に健全な文化の構築を考えている人なのかどうか、こういう人たちに本当に公共の電波を任せてよいのだろうか、法律問題もさることながら、そういうことをよく見極める必要があると思います。放送会社というものが一般企業と大きく性質が異なることは明らかだからです。
彼らはアメリカ流の企業売買を真似していると考えているのかもしれません。しかし、アメリカの事情に詳しいデーブ・スペクター氏は日本テレビの番組「ザ・ワイド」で、村上氏の「クズ発言」を強く非難し、「ああいうことは絶対に言うべきでないし、彼らがやっていることは本当の企業買収ではない」ということを説明しているのを見て、私は日本人として恥ずかしく感じました。
日本人の持つ道徳性の高さを土台にして、お互いに信頼し合いながら「もの創り」をしていく日本的経営の良さというものを、わざわざアメリカ人から教えられなきゃいけない時代になったのかと思うと、何だか寂しくなってしまいます。 |