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20105

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江本武忠
(えもと・むちゅう)

(2005/10/25(Tue.) 12:53 〜 2005/08/01(Mon.) 20:42)

  証券会社のシステム障害 2005/10/25(Tue.) 12:53 

最近は株式の売買をインターネット上で行なうネット株が盛んで、日々の相場で生計を立てる「デイトレーダー」と称される人々の名称も定着しました。
そういう方々にとって、情報を流す証券会社のシステム障害は致命的な打撃となりうるものですが、インターネットにシステム障害はつきもの、ということもまた事実です。

昨日、インターネット証券の「楽天証券」でホームページの売買画面に接続できず、午前中ずっと株式売買が出来なくなるという障害が生じました。「原因は調査中」とのことですが、利用者にとってはシステム障害の原因などに関心があるのではなく、それによって実際に株売買の損失があったかどうか、ということでしょう。

損失がなければ良い、というものでもないですが、もしも会社のシステム障害によって大きな損失を受けた利用者がいたとすれば、その補償問題などについては法律問題も含めて相当ややこしい議論が考えられます。もちろん楽天証券の問題だけではなく、いずれのネット証券でも起こりうる問題です。

一般に、株や先物取引については手数料や参加の仕方など、どんどん自由化が進みました。しかし、それと同時にいわゆる「自己責任」の問題やインターネットで起こる障害についても、今後は会社と利用者がお互いに負うべきリスクについてある程度細かいルールが必要になってきたんじゃないか、という印象を受けます。

顧客が損をするのは「自己責任」。しかし、会社がシステム障害を起こした時は「お詫び」で済まされる。。。どう考えても、これは不公平じゃないかという気もします。



  前原さんは、ポケットから賽銭を出さないのか。 2005/10/23(Sun.) 14:39 

小泉首相と前原民主党代表の党首討論で、靖国問題について論じられました。そこで、前原さんは「ポケットから賽銭を出す。あれはないでしょう。あれは参拝じゃない」などとおっしゃったので、私は驚きました。

一体、前原さんは小泉さんに対して「参拝を控えろ」と言いたいのか、それとも「もっとシッカリと賽銭を捧げて、ちゃんと参拝すべきだ」と言いたいのか、さっぱり分からない議論になってしまった。

そもそも、前原さんは神社にお参りした時、ポケットから賽銭を出すことはないのでしょうか。私を含めて、普通は賽銭箱にお金を投げ入れる時、ポケットから出す人が多いと思うし、実際そういう光景をよく見かけるのではないでしょうか。それとも、ポケットから賽銭を出す大多数の人に向かって「けしからん」とでも言いたいのでしょうか。

批判のための批判。。。前原さんの議論の仕方をみていて、そう思いました。岡田前党首に比べて威勢がいい点は評価できますが、まだまだ国家の舵取りを任せたいと思うには遠い、という印象でありました。



  生命保険の不払い 2005/10/22(Sat.) 20:38 

明治安田生命保険で、過去5年間で52億円(1053件)もの不払いがあったということで社長・役員などが辞任しました。明治安田だけが不良な会社だとも思えないので、たぶん他の保険会社でも同様の不払いが隠されているのでしょう。

この現象は単に会計上のミスということではなく、年金を積み立てても結局はもらえなくなるという、国家の財政構造の縮図ともいうべき類似性があるのではないかと思います。

どうして、こういう重大なことが見過ごされるのかと考えると、理由の一つには保険というものの仕組みが素人(本人)にとってきわめて分かりにくい、ということがあるのではないでしょうか。私など、保険屋さんから何度説明を聞いても計算方法がよく分かりませんでした。ある保険を解約した時など、「あれっ。最初聞いていた話ではもっと戻ってくるじゃなかったっけ?」という不信感すら生じたことがあります。「やっぱり、保険屋が言うようなうまい話はないなあ」などと思ってあきらめました。

そういう状況につけて、今やテレビでは外資系保険会社の宣伝のオンパレードです。医者の診断も不要です、80歳でも簡単に入れます、掛け捨てじゃありません、掛け金も一生涯変わりません。。。この説明はきわめて分かりやすい。なので、これらの文句に飛びつく人もたくさんいるでしょう。しかも、朝から晩まで外資系保険の宣伝を見ないで過ごすことは難しいぐらい、有名な俳優たちが四六時中宣伝しています。

日本は世界でも貯金が多いとか、これから郵政民営化で郵便事業が活性化するんだとか、いろいろなことを予測していても、フタを開けてみれば国民の貯金の多くは外資系保険会社の引き落としになっている、というような悲劇・喜劇もあるかもしれません。

20年間無事故だったらいくらもらえます、なんて言っても、20年後の円の価値がいくらのものか、あるいはその頃日本がどういう状態になっているか誰も分かりません。

私たちは日本人です。このような日本の生命保険会社の悲惨な現状をみて単に批判するだけでなく、今後における日本人の、日本人による、日本人のための資産運用がいかにあるべきかをもっともっと真剣に考えるべきではないでしょうか。



  首相の靖国参拝 2005/10/18(Tue.) 13:20 

小泉首相の靖国神社参拝をめぐる裁判で、大阪高裁は先月違憲の判断を下しました。原告の損害賠償請求は棄却されたので形式的には「原告敗訴」ですが、違憲判決を勝ち取ったことで実質的には原告側の勝訴と言えます。

したがって、原告は「違憲判決」で満足したので最高裁に上告しません。もしも上告したら、憲法を中心に審議する最高裁としては逆に「合憲」という判断をする可能性もあると考えたのかもしれません。そういう意味で、国民としては最高裁の見解を聞けないという不満は残るとも言えますが、ともかく原告が上告しないことによって首相の靖国参拝は違憲であるということが確定しました。違憲判決の確定は、昨年4月の福岡地裁に続いて2つめです。

昨日(17日)の首相の靖国参拝は、まさにこの高裁判決の確定直後のものですから、挑戦的といえば挑戦的な参拝なのでしょう。
判決では首相の参拝が宗教活動であるという趣旨のようですが、私はそうは思いません。例えば首相がクリスマスのお祝いをしても宗教活動とは言えないように、日本人にとって神社参拝は宗教というよりは一種の風習だと考えられるからです。

問題はひとえに、靖国神社に祭られているA級戦犯を首相が崇拝しているかのように誤解されている、という一点に集約されると思います。
今回の参拝は、首相が昇殿せず一般参拝者の形式をとっただの、ポケットから賽銭を出しただの、署名をしなかっただの、柏手を打たなかっただの。。。そういうパフォーマンスによって「総理大臣としての行為ではないし、宗教活動でもない」ということをアピールしているように見えます。

しかし、この際そういうパフォーマンスはほとんど意味がないでしょう。参拝したことは事実ですから、その行為の説明はどこまでも求められるのでしょう。ところが、首相はいつもの通り「適切に判断した」という一点張りを通すのみで、これでは何の説得力もありません。

私自身も靖国神社には参拝しますし、日本人として当然の行為だと思うのですが、海外から誤解されている以上、首相としては誤解を解く責任があるでしょう。
例えば、靖国神社という特定の小さな宗教法人ではなく、外国の要人も案内できるような国立墓地を作って戦死者だけでなく国家功労者・国際的功労者を慰霊する施設を作るというのも一つの案です。

また、そもそも「A級戦犯」というのは不当な裁判であった東京裁判で勝手に付けられたランキングにすぎませんから、いわゆる「A級戦犯」にされてしまった人を含めて改めて各戦没者を正当に評価するような決議を行なうことも必要だと思います。

岸信介元首相なども「A級戦犯」でしたが、東條英機などと同類項で扱える人でないことは確かでしょう。結局、日本はそういう戦後の整理が独立国家として正当になされておらず、ずるずるとアメリカの言いなりになってきたわけで、その“ひずみ”が戦後60年の節目に生じてきたのは当然のこととも言えるのです。自分の国の中で戦後の明確な総決算ができない状態では、他国に対しても説得力のある説明ができないことは当たり前だと私は思います。



  「奇跡の詩人」は真実か、あるいはインチキか 2005/10/11(Tue.) 01:19 

最近、「異議あり!奇跡の詩人」(同時代社発行、2002年)という本を読みました。これは脳障害児などの治療法として著名な「ドーマン法」(ドーマン博士の考案)によって奇跡的に治療され、感動的な詩集を出版するまでに至った「奇跡の詩人」日木流奈(ひきるな)君の治療例について、インチキであると糾弾したもので、左翼弁護士の滝本太郎氏と週刊文春記者との共編著の本です。

滝本氏の仲間で週刊文春の論客でもある元共産党員の有田芳生氏も、この本の内容には共鳴していて、講談社から出ている日木流奈君の本を読んで怒りがこみ上げてきたということが有田氏のホームページにも書かれています。

有田氏いわく、日木流名君の文章は「詐欺的に表現」されたもので「12歳の脳障害児がこのような大人言葉の本を書けるはずがない。いや一般的な発達をした12歳でもこんな子どもらしくない文章は絶対に書けない。いや書かない。(中略)社会経験が乏しい発達段階において、こんな文章を12歳の子どもが書けるわけがない」とのことです。[Click Here!]

2002年4月28日にNHKが日木流奈君の治療例を特集した「奇跡の詩人」という番組についても、その番組の直後に講談社から本が出ていることから講談社とNHKがつながりについても非難しています(しかし、流奈君の本は講談社より大和出版から出ているもののほうが多いですけどね、笑)。

上記の滝本太郎氏の本には有田氏のコメントも載っていて、賑やかさを増しています。私が思うに、まあ確かにドーマン法で不幸にも治療されなかったケースもあるだろうし「指示通りにやったけど治らなかった」というトラブルもあるのだろうとは思うのですが、個々の病状の重さにもよるでしょうし、人間の脳というものはまだまだ人智では測り知れない神秘的な側面もあります。単に唯物的に「治るはずがない」「12歳の少年がこんな文章を書くわけがない」と即断できるものでもないでしょう。

ドーマン法については、むしろ治療が成功した事例の中にこそ、人間の神秘的な回復力、未知の能力について深く考えさせられるものがあるように私には感じられます。そして、そこには唯物主義的な考えを持つ人間には想像もつかない驚異的な脳の機能が秘められていたりするのかもしれません。



  健康食品の「バイブル本」 2005/10/08(Sat.) 12:49 

史輝出版が発行した本で、メーカーとタイアップして健康食品アガリクスの効能を宣伝したということで出版社役員、ゴーストライター、監修者(東海大名誉教授、医学博士)らが摘発されました。

問題の本は「即効性アガリクスで末期ガン消滅!」「徹底検証!末期ガンに一番効くアガリクスは何か」などですが、大きな書店に行けばこういう種類の本は他にも一杯、い〜〜〜〜っぱいあふれています。「メシマコブでガンが治る」「水溶性キトサンでガンが治る」「霊芝でガンが治る」「βグルカンでガンが治る」「SOD様食品でガンが治る」「微量元素でガンが治る」というような調子で、あげればキリがありません。

しかも、内容はゴーストライターが書いた作文である可能性もあり、権威付けのために名前を貸している監修者も、たいていは医学博士だの薬学博士だの理学博士だのという肩書きをふりかざした感じの常連さんのことが多いように思います。
本の中では商品名を書いていなくても、「お問い合わせ先」などが書いてあってメーカーにつないでいるケースも多いですから、今回の件で逮捕されるのならば、他にも逮捕されるべき人々が一杯いるのではないかという気もします。

ただ、こういう種類の本を出版することが逮捕に至るほどの犯罪であるというのならば、そもそも健康食品というものの存在価値についてもっと突っ込んだ議論がなされても良いのではないでしょうか。サッパリ何の効果もないのならば、それはもはや健康食品とは言えないだろうし、少しでも効果・効能を言ったら逮捕されるというのでは窮屈で仕方ないように思います。もちろん史輝出版のようにウソの体験談を書いて購買心をあおるような行為は許されませんが、全ての健康食品に効果がないというわけでもないでしょう。

医薬品の副作用で病状が悪化した人や、原因不明で病院から見放された患者が健康食品を摂取することで改善した例などは実際には多く存在するようですし、アメリカでは医薬品と同様にサプリメントの摂取も重視されているほどです。“代替医療”という概念が世界的にも進歩しつつある現在、医薬品以外で「効いた」「治った」と言えば薬事法違反で逮捕する、という一方的な姿勢だけでは片手落ちのような気がしてなりません。



  再び「のまネコ」事件 2005/10/07(Fri.) 22:51 

エイベックスが2chのキャラクターを盗用した事件で、社長の松浦さんがネット上で謝罪したとのことですが、謝罪は当然のこととしても、何となくかみ合わない部分があるようにも感じられます。

本日の報道によると、松浦社長は「むしろ2チャンから派生したキャラクターが有名になっていくことに2チャンの方々が喜んでくれるのではとも思っていました。我々の考えが甘かったのかもしれません。そこは素直に謝罪します」と述べたということですが、これはちょっと違うんではないか。

あのキャラクターがヒットしたことについて、もともとお笑いネタの好きな2chの人々は基本的には喜んだだろうし、声援も送ろうとしただろうと私は思います。
ところが、エイベックスは当初、2chのキャラは自分の会社のものとは関係がないという趣旨の発言をしたばかりか、「2chでキャラを使用することを妨げるものではない」などと、一体どちらが本家本元のオリジナルかわからないような非常に傲慢な態度を取っていたわけで、「考えが甘かった」とか、そういう問題とは性質が違うと思いますけどねえ。



  ニュース「見出し」の著作権と引用 2005/10/06(Thu.) 22:58 

いわゆるティッカー形式でインターネット上に表示するニュースの見出しが著作物に相当するかどうかを争う裁判がありました。[Click Here!]

第一審(東京地裁)では著作権を主張する読売新聞の主張が認められず、被告デジタルアライアンスに対する損害賠償請求は棄却されましたが、控訴審では読売新聞の請求が一部認められました。
ただ、それは著作物であることが認められたのではなく、ニュースの見出しといえども新聞社が苦労して制作しているものだから、それを勝手にビジネスで使用する行為は不法行為に当たる、というものでした。

しかし、どんなものでしょうか。ああいう「一行ニュース」みたいな見出しは、読売でも朝日でも毎日でもほとんど同じような表現になることが多いんじゃないかなあ。。。例えば「原辰徳、巨人新監督に就任」とか、大体同じような表現になるんじゃないかなあ。どうなんだろう。
また、その表示をクリックすればちゃんと読売新聞のサイトに飛ぶようになっているとすれば、読売新聞にだって大いにメリットがあるというものでしょう。高裁の判決文を書いた人(塚原朋一裁判長)はそういう事情についても考慮したのだろうか。


そもそも新聞記事というものは引用されるのが宿命であり、別の言い方をすれば多く引用されるほど新聞の評価は高いともいえます。その新聞社がニュースの小見出しにまで「著作物だから引用するな」と言って引用されることを嫌がり始めたら、かえって別な面のマイナスが大きいような気もします。
この裁判は、私個人としては東京地裁の判決(第一審)のほうが時代に即した妥当な判断のようにも見えるのですが。。。



  「殺害するつもりがないのに」 2005/10/06(Thu.) 11:51 

「闇サイト」で不倫相手の妻の殺害を請け負った業者(自称探偵)が逮捕されたということですが、報道によると警視庁捜査1課は「殺害するつもりがないのに女から現金をだまし取ったとして」詐欺の容疑で逮捕したという(毎日新聞10月5日23時23分更新)。

確かに詐欺罪を立件しようとしたら、「殺害するつもりがなかった」という事実を認定するしかないのだと思いますが、これではまるで実際に殺害しなかった契約不履行が問題だと言っているようで、かなりの違和感を感じます。まさか「お金を受け取ったのに、なぜ殺してあげなかったのか」と責める人もいないでしょう。

問題の本質は、容疑者が殺害するつもりで営業していたかどうかということではなく、そもそも殺人を代行するような営業を行なったこと自体が言語道断の違法行為なのであって、その時点で殺人幇助などの容疑があると言わねばならないと私は考えます。



  「のまネコ」事件 2005/10/05(Wed.) 15:17 

2chの中で誕生したキャラクターからヒントを得て(要するに真似をして)、エイベックスが「のまネコ」のFlashムービーを商売に使って盛んに儲けていた件で、先日エイベックスがFlashムービーのCD収録を中止、さらに商標登録についても断念したということでした。

まあ、それ自体は妥当なご判断だろうと思います。2chで書き込みをしている人々からすると、「ここから誕生したキャラクターが、どうして勝手に盗まれて商売に利用されるのだろうか」という不満があっても当然のことでしょうから、むしろエイベックスは2chに対して謝罪(または利益の一部を還元)してもいいぐらいの案件ではないかと思います。

ところが、エイベックスは2chの中で“殺人予告”“放火予告”の投稿がなされたことを非難して警察に被害届を出し、「自分のほうが被害者である」という印象を強く出すことに成功しているようです。この点ではマスコミも、エイベックス側に立った報道をしていました。

ここで、よくよく考える必要があります。たしかに匿名掲示板などで「殺してやる」などの投稿がなされることは違法なことであり、厳重に取り締まらねばならない人権侵害問題であることは言うまでもありません。
しかしながら、そのことはただちに2ch全体が悪いということを意味するわけではありません。2chとしては掲示板に違法な投稿があれば、しかるべく善良に管理(削除など)する義務があるということ、また捜査機関などから依頼があれば投稿者の個人情報について明らかにする義務があるということであって、個々の投稿に2ch全体が責任を負うという話ではありません。ましてや、2chは悪質な集団なのだから、そんな場所で生じたキャラクターを勝手に盗作しても全然構わないんだ、というようなことにもならないでしょう。

それが、世間一般であたかも「エイベックス対2ch」で対等にやり合っている問題であるかのような印象が出ているとすれば、どうも私はエイベックス側がうまくやりすぎているような気がしてなりません。企業が大きくなればなるほど、もっとネット上の著作権侵害問題などについて真剣に考えていただきたいものだと思います。



  安定政権の功罪 2005/10/02(Sun.) 18:19 

ふ〜〜〜。選挙後もいろいろあって、なかなか書き込みができませんでした。できれば、今年中にサイトを刷新させたいと考えております。

さて、小泉安定政権が樹立しました。いろいろ特色のある人も登場しました。“思いがけず”国会議員になった人も一人や二人じゃないようですし、自民党が勝ち過ぎたために自民党比例区の未登録枠を利用して社民党の議員が当選するという珍事も起きたようです。それもこれも、自民党の圧勝がなせる業でした。

とにかく、小泉自民党が選挙に大勝したことは誰もが認める事実です。しかし注意すべきは、これまで多くの人は自民党が勝つにせよ社民党が勝にせよ、日本にも「2大政党政治」が確立するのではないかと予想していたと思うのですが、それが完全に裏切られたということです。安定政権が確立したプラス面もあるけど、こちらのマイナス面の大きさは未知数であるだけに不気味な恐ろしさを秘めているとも言えます。

私は小泉さんの目指すものを理解しないわけではないので、絶対安定政権を利用して構造改革を進めること自体には大いに賛成なのですが、それにしても法案の内容や政策を厳しくチェックする機能がどこかで働いていなければ決して健全な政権とは言い難いことも確かです。安定、イコール健全ということではないでしょう。

実際のところ、自民党が勝ったのは不況にあえぐ国民の不安な気持ちが「改革」という言葉に短絡的に反応しただけのことかもしれません。今や日本は「5人に一人が65歳以上」という高齢国家になりました。中高年を主とする自殺者は年間3万人、これは「15分に一人が自殺している」という現状を意味しています。
ソニーは1万人の人員削減、サンヨーは1万4000人の人員削減をすると発表しました。来年は多数の失業者が出るだろうし、いわゆる団塊世代の定年ラッシュと重なるので無職層が巨大化します。「ニート」と言われる、社会から浮いてしまった人々の層も厚くなるでしょう。

国が言うには、「景気は踊り場を脱した」ということですが、そんな「景気のいい話」をどれぐらいの国民が実感しているでしょうか。政権の安定と国民生活の安定は全く別物です。小泉さんの言う構造改革が、国民生活の安定に結びつくものであることを期待する以外にありません。



  自民党「仁義なき内ゲバ選挙」と国民の姿勢 2005/08/13(Sat.) 01:48 

「自民党をぶっ壊す!」と言った小泉首相の公約の通り、今や自民党は内ゲバ状態であり、郵政民営化法案に反対した者に対して「刺客」(有力対抗馬)放って容赦なく皆殺しにする抵抗勢力一掃戦略が開始されました。
この戦乱が始まった以上、選挙に臨む国民としては否応なく何らかの判断を下さねばならない状況に置かれたわけです。一体、現時点でどのように考えるべきなのでしょうか。

例えば東京10区の小林興起さんに対しては、小池百合子環境大臣を刺客として当てました。小池さんは有名人ですが、小林さんは地元票を多く持っています。ですから、この二人が対決した場合「共倒れ」になる可能性が非常に高いと言わねばなりません。それを承知の上で小泉さんは刺客を導入しているということは、明らかに「共倒れしてもいいから、とにかく造反者を抹殺せよ」という、いわば自爆テロ的な戦略である、ということが出来るでしょう。

ところで、この選挙は郵政民営化に反対か賛成か、ということを問う選挙であると言われるのですが、よくよく個々の候補者の声を聞けば、法案に反対した小林興起さんは「郵政民営化に反対しているわけじゃない。あんな法案では出来ない、といって反対した」ということを明言していますので、法案には反対しても「郵政民営化」そのものには明らかに賛成していることが分かります。

確かに、あの法案は名前は「郵政民営化法案」になっていますが、実質内容は竹中平蔵博士という大学の先生が机の上でこね回わしたような現実味に乏しいもので、穴だらけの法案であるという評価が高いのです。
別の言い方をすれば、そういう「骨抜き法案」だからこそ安心して賛成したという不真面目な議員も存在したはずであって、賛成した議員と反対した議員のどちらが真剣に郵政民営化を考えていたか、表面だけでは判断できないという面があることを国民はよくよく見抜かなければいけません。


しかし、現実の選挙は非情にも小泉さんの造反勢力一掃、全員焼き討ち作戦が展開しており、そのためにあらゆる手段を講じる勢いです。
反対者は党の公認をもらえず、新党を結成できない場合は無所属で出るしかありませんし、いまさら「私は法案には反対したが、郵政民営化には賛成なんだ」というようなややこしい主張が通る雰囲気でもなくなってきました。それはマスコミにも責任があるかもしれませんが、ともかく状況はもはや戦国時代の様相を呈しています。

さて、ここで考えなければいけないことは、一つの大きな改革が成就するためには、ある程度は理不尽な出来事も生じるのが歴史の常であるということです。永岡洋治議員の自殺なども、そういう犠牲の一つなのでしょう。小林興起さんのように、法案について真剣に考えるがゆえに反対したことで反逆者呼ばわれして、政界から抹殺される危機に直面してしまうという現象も、一つの理不尽でありましょう。

ただ、我々国民は種々の細かい現象にとらわれず、大局的な見地に立って判断しなければなりません。確かに、郵政民営化法案は骨抜きの性格も強く、地方の郵便局の確保についてもきわめて不明瞭な欠陥法案ですから、多くの人が反対している理由もよく分かります。
しかしながら、国家の政権をかけた大きな選挙が始まった今となっては、各地の郵便局がどうなるかという細かい法整備についてはあとから修正案を検討しうるものと仮定して、ともかく大筋で郵政を民営化することが今の日本にとって有益であるかどうか、というテーマに対する判断が国民一人一人に問いかけられているという事実は否定すべくもありません。

もしもそうだとすれば、たとえ個々の細かい場面においては理不尽な、あるいは非道な「仁義なき闘い」「内ゲバ」とも言える現象が見られるとしても、大筋では小泉さんが議員バッジをかけて問いかけた郵政民営化の問題に対して、国民はいずれを選ぶのか明確な意思表示をする義務を伴う選挙である、というべきではないでしょうか。


仮に小泉自民党と公明党が過半数をとれずに敗北した場合、小泉さんは「自民党を傲慢にも私物化し、善良な議員を自殺に追いやり、自民党員同志を分裂させたばかりか党本部と地元県連の関係を傷つけ、首相としてなすべき多くの重要課題を放棄して解散した無責任で非道な政治家」という評価で終わってしまうかもしれません。

しかし、もしも小泉さんの計画通り再び政権を取ることができたらどうでしょうか。どのような評価になるでしょうか。小泉さんは政治家としての生命をかけて自民党の体質を根本から改善したばかりか、郵政民営化によって悪しき官僚天国・役人天国を解体し、国民の資金を本来あるべき国民の手に還元して、あらゆる改革の突破口を開くことに成功した偉大な政治家、という評価が与えられる可能性も大きいと言わねばなりません。

そういう意味で、良い政治家を作るのも作らないのも、ひとえに国民の判断にかかっている、という側面があるということを、今回の選挙を通じて我々国民は深く考える必要があるのかもしれません。



  「殿ご乱心」解散に思う 2005/08/08(Mon.) 23:57 

小泉さん以外、誰一人として望まなかった衆議院の解散が決行されました。これにより、郵政民営化法案はおろか、組織犯罪処罰法の改正案や少年法改正案などの重要法案もみな廃案になり、数百億円の税金が消費されるという総選挙に突入したわけです。

小泉首相は「郵政民営化に賛成か反対か、民意を問う選挙」という位置づけをなさったけれども、ハッキリ言ってそれはおかしい。もともと世論は郵政民営化に概ね賛成であり、(野党はともかくとして)反対した自民党議員たちの大半も民営化の趣旨そのものには賛成しているのであって、あくまでも参議院で否決されてしまった理由は法案内容の修正をめぐるものだったからです。思うに、小泉さんが現場の意見をもっと謙虚に聞き入れて、明らかな不備について修正する姿勢を示せば法案は参議院を楽に通過したんじゃないかと考えられます。

また、再度小泉さんが首相になって同じ法案を提起したとしても、参議院は今と全く同じメンバーですから、衆議院は通過出来ても参議院では当然否決されて、今回と同じことの繰り返しになります。結局、小泉さんは反対意見に謙虚に耳を傾けて法案の不備を修正するしかない、ということに気づくまでは堂々巡りになるということを意味しているのです。

しかし、ともかく解散した以上、次の体制に焦点が移りました。反対した自民党議員たちは党の公認を受けられないので新党を結成する動きになるでしょう。また、小泉さんは少しでも自分の考えに従わない人をバッサバッサ斬り捨てて「少数精鋭主義」に徹する感じで、自民党も以前の自民党ではなく「新生自民党」あるいは「小泉党」のようなものになるでしょうから、いずれにせよ新党結成みたいなものです。

注目は民主党の動きですが、「いよいよ政権奪取のチャンス到来」と言っているわりには、今のところ何となくサエナイ。。。岡田さ〜〜ん。小沢さ〜〜ん。
民主党にも良い議員は一杯いるのですが、どうも一体化していないのが気になります。本当に政権を取る気持ちと具体的な政策があるのかどうか、ここは大きな見所になると思います。



  国家体制の解体を急ぐ小泉さんの手法について 2005/08/06(Sat.) 12:11 

小泉さんは「自民党」の政治家です。しかし、今の小泉さんはむしろ自民党解体の方向を目指しているように私には思われます。9年前に出た小泉さんの「官僚王国解体論」(光文社、1996年刊)を読み返してみると、郵政民営化についての持論も展開されているのですが、巻末には「郵政三事業の民営化、それは官僚王国日本の現体制を一度すべて解体し、出直すことにほかならないのだ」という一文で締めくくられています。

要するに、小泉さんは官僚中心の現体制を全部解体してしまわなければ日本の将来はないのだ、という考えで突き進んできたわけです。むろん、官僚主義の弊害については私もよく知っていますし、国民の税金などが天下り官僚に流れていたことなど周知の事実ですから、そういう意味ではもっともな見解であるとも言えるでしょう。

しかしながら、そういう悪しき官僚体制の弊害問題については「何でも民営化すれば解決する」ということでもありません。確かに、郵政事業について民営化すればメリットがある部分はよく分かるし、大きな方向性としては国民の賛同を得られるとは思うのですが、個々の郵便局の仕事についてまで、何が何でも民間でやらなきゃいけないという理由が私にはさっぱり分かりません。

例えば、郵便局の仕事が民営化されれば当然利潤を追求するようになるわけですから、無駄なことや採算の合わないことは廃止されます。50円のハガキをどしゃぶりの雨の日でもカンカン照りの日でも山奥まで届ける、などという効率の悪いことは絶対しなくなるでしょう。小泉さんは「民間で出来ることは民間で」と言われるのですが、郵便局の仕事などはむしろ「民間では出来ない」仕事の代表のようにも感じられます。

また、郵便局を民営化すれば労使関係のトラブルが予想されるし、労働者の当然の権利としてストライキが発生します。すると、年賀状が届かないとか、小包の中のものが腐るなどの問題が生じます。裁判所の訴状や出頭命令が届かないなどの問題も出てきますので、憲法で保障された「正当に裁判を受ける権利」も侵害される可能性が出てきます。いやしくも国家の法案というものは、少なくともそういうマイナスの可能性に対する対策があって初めて通過する、というものでなければなりません。

郵貯の不正使用の問題についても、もちろん郵便貯金が不正に流れることはけしからんことですが、それは不正なことをやっている人物がけしからんという問題であって、民間企業が「国民の預金」に手をつけて勝手に運用したほうがいいという結論には直接結びつかないでしょう。
頭のいい経営陣がそろっている大手の銀行ですら経営に失敗して合併倒産するのですから、郵便事業だけは民間でうまくいくなどという保証はどこにもないのです。

他にもまだまだありますが、そういう多くの問題についてほとんどまともな審議や答弁すらなされていないまま法案可決を強行することは、国民としては相当のリスクを負うものとして抵抗を感じざるを得ないでしょう。
しかも、「解散が嫌なら法案に賛成しろ」という小泉さんの姿勢はかえって参議院の威信を踏みにじるものだと言えます。参議院を「付録」みたいにしか考えていない証拠だとも言われても仕方ないでしょう。また、問題は法案の内容なのであって、解散が嫌だとか好きだとかいう低い次元の問題で国家の法案が左右されるような政治をやられたら、国民としてはたまったもんじゃない。

小泉さんが国家の体制を解体しようと急ぐあまり、一大改革である郵政民営化について議論が中途半端になることは非常に残念なことです。また、せっかく一緒に改革を進めてきた自民党の同志からも国民からも支持が得られなくなることは、むしろ小泉さんの本来の願いとは逆方向になっているのではないだろうか、という気がしてなりません。



  「殺人法案」と独善政治の愚かさ 2005/08/01(Mon.) 20:42 

自民党の永岡洋治・衆議院議員が自殺しました。自殺の原因は不明とされているものの、ご本人が郵政民営化法案に反対している亀井派に所属しながらも武部氏らの猛烈な説得に屈して賛成票を投じてしまった行動をめぐって深く悩み込んでいたことは誰の目にも明らかでしょう。

郵政民営化法案というものは、本当にこれほど急ぐべき法案なのでしょうか。実際は、この法案が最大の政治案件であるなどと本気で思っているのは小泉首相ただ一人であるというのが実状ではないでしょうか。現実には外交問題や失業問題、環境問題など、もっともっと急ぐべき課題はあるはずです。

また、これほどに批判や疑問点の多い郵政民営化法案について急な判断を迫られた場合、永岡議員のように真面目な政治家であればあるほど政治的圧力に対して精神的に追い込まれることは明らかであって、そういう意味でこの法案は「殺人法案」であるとも称することができるでしょう。


元大蔵省財務官の榊原英資さん(慶大教授)は郵政民営化法案について「百害あって一利なし」と言われましたが、それほどでないにしても、疑問だらけの法案を無理やり押し通す小泉首相の個人願望優先の姿勢はどう見ても独善政治であると言わざるを得ません。

法案は可決されても否決されても、多くの議員たちと有権者の間に深い遺恨を残しますし、それ以降自民党がうまく一体化できるとは到底考えられません。もちろん、自民党が崩壊しても小泉さんは痛くもかゆくもないでしょうし、むしろ小泉さんは自民党崩壊を望んでいるのかもしれませんが、緊急課題の多い日本の大切な時期に政局の混乱を招く責任はきわめて重大です。

郵政民営化には、メリットもあるしデメリットもあるでしょう。反対している人々も決して個人的な感情で反対しているのではなく、現場の郵便局業務にたずさわる人や郵便局利用者の民意を懸命に反映しようとしているということは、国会の質疑を見ていてもよく伝わってきます。だからこそ、成立を急ぐのではなく話し合いが大切なのでしょう。

死者を出してまで、何ら急ぐ必要のない個人的道楽のような法案を無理やり押し通す小泉政治の手法には、やはり限界が見えてきたと言うべきなのでありましょうか。




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■むちゅうの気まぐれ日記■