文先生の構想をうかがった時、「これだ!」とビクッときた
                      ───西堀栄三郎博士は語る
西堀栄三郎(にしぼり・えいざぶろう)

第一次南極越冬隊隊長、「雪よ岩よ、我らが宿り」の名曲「雪山讃歌」の作詞者としても著名な世界的探検家・登山家。
1903年京都生まれ。京都帝大卒後、京大助教授を経て東京電気(現・東芝)に入社(1949年退社)。理学博士。1954年デミング賞受賞。1957年第一次南極越冬隊隊長。日本原子力研究所理事、日本規格協会顧問、日本生産性本部理事、日本工業振興協会会長などを歴任。
日本山岳会会長。1973年京大学士山岳会ヤルン・カン遠征隊隊長。1980年チョモランマ登山隊総隊長。著書に「南極越冬記」(岩波新書)、「石橋を叩けば渡れない」(日本生産性本部)等多数。1989年4月逝去。

<久保木修己・統一教会会長との対談より>

西堀博士
私としては、文先生にお目にかかってお話をうかがったことが非常に大きなエポックだったわけです。ショックとでも言った方がいいかもしれません。(中略)文先生の構想をうかがった時『これだ!』とビクッときたわけです。この構想はいつか実現されなければならない。しかも子々孫々に喜んでもらえるスタイルで」

久保木会長「私たちには当初、この雄大な構想そのものがピンとこなかったわけです。その本質を見抜けず戸惑うことの方が多かったと思います。そういう中で、西堀先生がその核心をつかみ『これだ、やらなければならない』と言って、早速行動に移されたことは、我々にとって驚きだったわけです」

西堀博士「恐らく世界中の方々がみんな『無茶なことを言う』と考えられたことでしょう。私は夢をもっていましたので、“一人の人間として爆発した”と言った方がいいでしょう。もう一つ言えば、日本は太平洋の一孤島ですが、トンネルが完成した暁には大陸と陸続きになる。言い方をかえれば、日本が大陸の仲間入りをさせていただける。これは子々孫々が喜ぶに違いないという気持ちもあったんですね。(中略)
人事を尽くして天命を待つのであって、何もしないで天命を待ったらおかしい。そういう意味で、文先生の思想には敬服しております。一見、不可能のようなものでも、誰かが考えると賛同者がだんだん広がっていき可能になる・・・

久保木会長「そこなんです。私が一番申し上げたかったのは。申し上げるまでもありませんが、無形なものから有形なものまですべて、授受作用すなわち、持ちつ持たれつの関係によって初めて存在し、発展の契機となると考えますから、文先生がとてつもない構想を発表された時、それに受け応え出来る対象が必要となるのです。私は、西堀先生が見事にその役割を果たして下さったと感じています」

西堀博士
私はただ神様の指図で動いたにすぎません。楽観的にこのプロジェクトに取り組んだことは事実ですが、何ものかが私にそれを要求したのです。だから磁石に鉄粉が吸い寄せられるように、佐々さん(佐々保雄博士)をはじめ、素晴らしい方々が集まってくれたんだと思います。(中略)私の行動を未来に子孫が感謝するとすれば、私を指図した神様に感謝すべきです」

久保木会長「経済問題について考えてみますと、この構想が提唱された直後ぐらいから顕在化してきたのが日米経済摩擦です。たしかに日本が孤立化していくことは間違いなくなってきました。(中略)そうなってくると、やっぱり日本はアジアと共同でアジア共同体をつくり、アメリカその他となるべく摩擦を起こさないで共存共栄できるようにしなければなりません。今はそういうふうに、方向を転換せざるを得ない時に来ていると思うのです。そういう点で、ちょうど時期を同じくしながらアジアに向けて国際ハイウェイやトンネルが出来上がっていくなあと、それこそ神様の知恵というか計らいであると考えざるを得なくなってきたわけです」

西堀博士「そうですね。文先生は非常にいいタイミングをご存知だったようですね。以前から文先生がキリスト教の統一のことをおっしゃってるように、非常に困難な問題だがいつかなされなければならないし、ひいては全ての宗教の統一の問題、さらに国境の問題にもつながってくると思います

久保木会長「先生のおっしゃる通りです。また人間というものを考えると、私という個人と公に尽くすという公私の二側面があると考えます。そのどちらを優先するかによって、善とか悪とかの方向が出てくると思わざるを得ないわけです。だから、アジア共同体にしろ何にしろ、世界のためにということであれば、有効に発展するのが天倫だと考えざるを得ません。(中略)宗教家は、そういった善の競争をすべきで教義の善し悪しで紛争するのは愚かなことだと早く気づくべきです」

西堀博士「国の場合もそうだと思います。(中略)だから今度のトンネルにしても、日本が大陸の一部になることに対して反対する理由はないと思うんです。ただもう皆さんの力でスタートしており、矢は放たれたわけですけど、必ず成功させなければならないし、また成功すると確信します。(中略)人類が見たこともなかった月の裏側の写真や月の石の価値は、数字では表すことはできません。
日韓トンネルもまた同様だと思います。私が生きている内に実現したらよろしいし、もし出来なかったら、生まれ変わってでもそのトンネルを通ってみたい気がします