王  国  

 

 イスラエル民族が建国した王国は120年間続きますが、これはサウル王、ダビデ王、ソロモン王という3人の王様が40年ずつ統治したのです。
 それまでは王様ではなく「士師」という立場の人が政治を行なっていましたが、やがて国家主権というものが確立してくると共に「国王」という存在が定められる段階になってきました。国家の政治は「国王」を中心として「預言者」と「祭司長」がそれぞれの責任分担を果たすという体制になっていったのです。預言者は神からメッセージを受けて国王に神の意向を伝えるのですが、あくまでも国王が国家の中心人物なのです。

 それで、最後の士師だったサムエルという人が「預言者」の立場に立って、サウルに「国王」としての権能を与えた所から、いよいよイスラエルの王国が始まりました。その儀式が、サムエルがサウルの頭に「油を注ぐ」という行為でした。「メシヤ」(救世主、国王)の元来の意味は「油を注がれた者」という意味なのです。

 ただ、「国王」という立場に立つ人はよっぽど自分自身を厳しくコントロールできる人物でないと、とんでもない危険なことになりかねません。なぜなら、自分の権力によって何でも出来てしまうからです。特に、国王が神のメッセージを伝える預言者の言うことを無視するような態度を取り始めると国家全体が間違った方向に進んでしまう可能性が出てくるのです。