平安北道定州郡に
ミロク(メシヤ)
が降臨するという伝説
 

 

 北朝鮮の平安北道定州郡に「弥勒(ミロク)」が降臨する、という伝説が民間に広く伝えられています。以下、日本や朝鮮の弥勒信仰にお詳しい宮田登教授の学術論文から引用させていただきます。

「孫晋泰『朝鮮民譚集』には、北鮮平北定州の超漢俊弥勒の伝説がのせられている。万暦任寅年間超漢俊なる者がいたが、(中略)全財産を投じて石橋を架けた。終わって余財は七文ばかり、それで一足の草鞋を買い取って旅に出たという。この漢俊は死んで三日目空中より声があって『超漢俊が弥勒となって出世するからよくこれを祀れよ』という。村人が声のする方角に行くと一座の石仏が地中から出現していた。人々はそこに小屋を立ててかぶせたが、弥勒は次第に大きく成長して屋根を突き破ってしまったので大屋をさらに作った。この超漢俊弥勒に祈れば男子を得ると信じられている。(中略)なお明の皇帝が一女をもうけた時、その背中に『朝鮮超漢俊』の五字があった。使を遣わして漢俊の有無を問うたが、時の人後患を恐れてその人のいたことを言わなかったので、明の皇帝は女子を妖物として殺してしまった。もし漢俊が七文で草鞋を買わなかったらば、明の皇太子に生まれ代わったのに、七文を利用したから皇女に生まれ、惨殺されたのたという話である。この超漢俊弥勒は民間によく口碑として残されているものだが、ミロクに子授けの機能があること、ミロクが再生すると期待されていること、そして外敵明の皇帝の意のままにならぬことを表示したことがうかがえる」(宮田登著、未来社発行『ミロク信仰の研究・新訂版』より)