掲示板における議論について
インターネットの掲示板で、「○○さんへ」などと特定の個人名を出して批判し(本人はメアド不明、つまり住所不定である場合が多い)、「文句があるならこっちへ来て議論しろ。それをしないのは自己中心的な奴だ」という感じで非難する人がおられます。しかし、その掲示板を偶然に見ていれば気が付くでしょうけれど、通常は仕事や実生活があるので自分自身が掲示板の管理人でもない限り、インターネットの掲示板ばかりを見ているわけではありませんし、また仮にどこかで本人に関係のある議論が持ち上がっていることに気づいたとしても、無数にある掲示板で出てくる議論の全部にいちいち応じることなど不可能なことで、体がいくつあっても足りないことになります。
「○○さんへ」などと書いて「来ないのは卑怯だ」と言わんばかりの投稿のあり方は、いかがなものでしょうか。どちらが自己中心的な投稿なのでしょうか。ここでは、そういう掲示板での議論のあり方について考えてみます。

掲示板は相手に回答を強いる性質のものではない

こういうタイプの投稿者がいます。ある質問をして、相手が親切心で答えると、更にどんどん質問を繰り返して回答を要求する、そして(答えるほうも常に書き込みをする余裕があるわけではないですから)答えないでいると、「逃げるのか!」とか「卑怯者!」または「負け犬になったな」などと子供じみたことを書いて、勝ち誇るというタイプです。

こういうタイプの議論をする人は精神的に子供っぽい面があるものと思われます。幼少時に母親から構ってもらえなかったトラウマがあるのかもしれません。基本的には、そのまま放っておいても大丈夫だとは思いますが、中にはまるでネットストーカーのようにしつこく誹謗中傷を繰り返す方もおられます。とくに男性が男性につきまとうのは不気味な感じもします。
あまりにひどい場合は管理人に警告すればいいのでしょうけれど、実は管理人自身がその犯人であることもけっこうあるのでやっかいなのです。

また、当人がいない場所で「○○さんへ」などと書いて質問する人もおられます。これも基本的には相手に対する依存心が非常に強く、「ねぇ〜こっち向いてよ〜」という感じの幼児タイプの方が多いと思われますので、基本的には放っておいてもいいとは思うのですが、
もしも「○○さん」が自分だったらけっこう心理的な圧力を感じるものです。ちょっと想像してみて下さい。一度でも経験してみるとその圧力を実感されると思います。

私信ではなく公の掲示板ですから、いわば誰もが見る路上の掲示板に自分の個人名で「○○さんへ」などと書かれているのです。しかも、内容は必ずしも穏当なものではなく、何かを非難していることが多いのです。それだけでなく回答も求められている雰囲気がある場合、その威圧感はけっこうなものです。こういう非難のされ方というのは、される側に立ってはじめてその痛みが分かると思います。

こういう場合、自分がその投稿に対して回答する意思がなければ、管理人に申し立てるべきだと思います。また、
管理人は「○○さんへ」と書かれた○○さんが回答を拒否して嫌がったのならば基本的には不快の意を確認した上で削除するべきだと私は思います。無理に回答させる権利など誰にもないわけですし、人が嫌がっているものを更に掲示しておくというのは、嫌がらせ以外の何物でもありません。それは法律云々ではなく常識程度でわかることです。

やたらと法律を持ち出す管理人のタイプ

嫌がっている本人が管理人に削除を申し立てた場合、やたらと「法的に何が問題なのか」と聞いてくる管理人がおられます。そうすると、何か法律論をもって答えざるを得なくなるわけですが、まあ強いていえば信用毀損、名誉毀損、場合によっては営業妨害等が成立することもあるかもしれませんが、もしも弁護士を付けた場合は一般的な不法行為(民法709条)で争う弁護士もいるだろうし、もっと別の法文(風説流布とか侮辱罪とか軽犯罪法違反とか、いろいろ)を適用する弁護士もおられるかもしれません。
しかし、インターネットの掲示板に関してはむしろそういう法律以前のネチケットで対応するのが最も望ましいのではないか、というのが私の考えです。

やたらと法律論でやり取りしようとする管理人というのは、基本的にはどんな被害者(嫌がっている人)が生じても削除しない、という方針を最初から腹で決めていて、「法律ではどうなんだ?」と問い詰めているだけのことが多いと思います。
そして相手(嫌がっている人)が何か法律的なことを答えれば、その個人メールを相手に無断で公開して「こいつは名誉毀損だと騒ぐ奴だぞ」というような印象を周囲に与えるという作戦なのです。きわめて狡猾です。そして「名誉毀損とは・・・」などと始める管理人もおられるようです。しかし、現実に苦痛を受けている本人にとってはそれが法律的に名誉毀損を構成するか軽犯罪に当たるかなどという専門的な法律論は主たる関心事ではないのです。
こういう、杓子定規に法律論などを振り回わす管理人の姿勢が昂じると、いわゆる“難くせをつける管理人”というスタンスが出来てきて、非常にタチの悪い掲示板の風紀が確立すると思います。そして、次第に掲示板が一種の誹謗中傷の手段と化してくる恐れすら生じてきます。しかも更に、それに輪をかけるようなレスがついて。。。

人はそれぞれ事情がある、それを相互に理解すべし

繰り返しになりますが、通常の人間は仕事をしています。ですから、インターネットの掲示板を見るという行為は、むしろ仕事から解放されてホッとする場であり、またそうあるべきではないかと私は思います。

そして、
人間の能力には限界があります。あちこちに無数にある掲示板をまさか毎日全部読むわけにはいきませんし、自分のことなどが話題に出ていてもその全部について関わっている余裕がないことも多いのです。また、いったん関わるとある程度の結論に至るまではその話題に拘束されてしまうということもありますので、最初にその議論に関わるか否かという判断はけっこう重要である場合もあります。要するに最初が肝心で、そこできっぱり態度を決めないといつまでも難くせを吹っかけられるハメにもなりかねません。特に、誹謗中傷を得意とするメンバーが出入りする掲示板の場合、一旦ひっかかったら大変です。

また、メールアドレスを隠して発言される人と、堂々とアドレスを表示して(あるいは本人の運営するホームページを公開して)議論をする気持ちのある人とでは、自ずとセキュリティ意識のレベルも異なるでしょう。
もしもアドレスを公開している場合、誹謗中傷や嫌がらせの投稿を野放しにするなど管理してくれない掲示板で発言することは、いろいろな意味で極力避けたほうがいいと私は思います。

大人の社会では、お互いの事情を尊重する一種の距離感というか(「距離を置く」ことと「遠まわしにイヤミを書いて誹謗する」ことは別ですが)、穏当な雰囲気というものが最初から存在するのですが、ネット社会に習熟しておられない幼いタイプの方が掲示板に書き込みをしておられる場合、不快な経験をする人が多数生じることがあります。まだまだ掲示板の交流のあり方についてはいろいろな見解もあるかと思いますが、当面思いつくままに書きました。2003.8.23江本武忠