誕  生  

 

 イエスはベツレヘムという高貴な地方で誕生しましたが、当時の王様(ヘロデ)は「新しい王(メシヤ)が誕生した」という占星術師などのうわさ話を聞いて、「こりゃあたまらん。そいつに俺の立場を奪われたら大変だ」というわけで、ベツレヘム周辺で生まれた2歳以下の男の子を皆殺しにしたのです。

でも、イエスの父親ヨセフは夢の中に現われた天使から「ヘロデ王が子供を殺そうとしているから、エジプトに逃げなさい」という警告を受けたので、ヘロデ王が死ぬまでの間は家族がエジプトに避難していて助かったのでした。でも、もちろんこれは身内以外には内緒の話。

 だから、イエスは成人しても本当の出身地のことを言いにくい状況にあったのです。一般には「ナザレのイエス」ということで通っていましたが、実はナザレという地方は「ナザレから何の良い者が出ようか」(ヨハネ福音書1章46節)と言われていたぐらい悪いイメージで差別されていたほどで、ベツレヘムと違ってド田舎だったのです。「田舎っぺイエス」というところでしょうか。

しかも、ご存じのように母親はマリヤだということははっきりしているけれども父親は不明だったので、もともと不倫が死罪(石打ちの刑)に当たるという当時の倫理観念からすれば、イエスは社会的に見て非常に苦しい立場にあったと言うべきでしょう。