十字架のイエス  



 イエスは、イスラエル民族がメシヤの出現を待ち望む状況の中、その深い信仰の基盤の上に「メシヤ」すなわち「第2のアダム」として誕生しました。しかし、イエスがメシヤであることを証言する役目を果たすはずだった預言者エリヤの立場の人物が公式会見の席上で「自分はエリヤじゃない」などと、とんでもないことを断言してしまったばかりか、つまらないことで国王の反感を買って首をはねられたためにイエスは貴重な証人を失ってしまいました。

その結果としてイエスは「偽キリスト」という最悪の立場に追いやられることになったのです。つまり、聖書の預言を忠実に信じる人々は「もしもイエスがメシヤだと言うのなら、メシヤであること証言する預言者エリヤはどこにいるのか?」という当然の疑問が生じるわけです。そういう事情があったため、イエスに従ってくる人達は旧約聖書の預言などをあまり知らない者しかいませんでした。実際、弟子たちは「いったい、律法学者たちはなぜエリヤが先にくるはずだなどと言っているのですか?」とイエスに質問していたことが聖書に記載されています(マタイ福音書17章10節)。

結局、旧約聖書に詳しい律法学者たちによって民衆があおられ、イエスは不当な裁判にかけられました。そして、「自分をメシヤと偽って神を冒涜した」という訴因でイエスに対する死刑判決が下ってしまい、十字架の上で殺されることになったのです。